K-1 武尊vsアダム・ブアフフの試合展開は?GP&ISKAダブルタイトルマッチ

2020年3月22日、さいたまスーパーアリーナでK-1 WORLD GP 2020 JAPAN ~K’FESTA.3~が開催される。

メインカードはGP&ISKAダブルタイトルマッチとなる武尊vsアダム・ブアフフだ。

武尊vsアダム・ブアフフの意味

武尊は対外国人に強い選手。実際に武尊のKO率も外国人相手だとかなり高い。

今回の対戦相手のアダム・ブアフフはモロッコ出身の打撃系ファイターで15戦無敗の若手だ。現在はISKAスーパーフェザー級のタイトル保持者である。

アグレッシブなスタイルで大振りのフックではあるが、相手をコーナーに詰めた時のラッシュが特徴だ。それに加え、足技を使うこともできる器用な一面もあわせ持つ。

この試合は統一戦として認定され、勝者は2団体のタイトル保持が認められ、敗者はベルト剥奪というリスクもある。武尊にとっては新たなる挑戦となる試合だ。

武尊がISKAフェザー級のベルト奪取を成功させれば、ISKA関連の海外での試合も期待される。つまりK-1以外で武尊の試合の場が増えるということだ。

K-1外であればまだ見ぬ海外のタイトル保持者との対戦も容易になり、武尊としてもK-1代表としてK-1が世界最強であることを証明することにモチベーションが上がっているに違いない。

ISKAのバンダム級王座にはあの那須川天心も君臨している。両者が交わることが現状の日本格闘技界では難しい以上、ISKA王座戦での名目の元、両者の対決が実現するのではないかとの期待も広がってくる。

武尊vsヨーキッサダー・ユッタチョンブリーの試合展開

アダム・ブアフフ戦を迎える前に、K’FESTA.2(2018年3月)におけるヨーキッサダー・ユッタチョンブリー(タイ)との対戦を振り返ってみよう。この試合を通じて武尊のファイトスタイルの特長が具体的にイメージできるはずだ。

この時期、三階級タイトル保持を成し遂げK-1無敵を誇っていた武尊の前に立ちはだかった外敵がラジャナムダンスタジアム現役王者であった。試合数も150戦以上していて今までKO負けがないタフさを持つヨーキッサダー。

武尊にとっては今までの強敵の中でも最高クラスに近い外敵であった。K-1vsムエタイの互いの格闘技の威信を賭けた試合でもある。

両者が向かい合うと、ヨーキッサダーの骨格の太さが目立つ。かなり頑丈そうなイメージだ。

武尊が1Rからローキックを多用しながらヨーキッサダーに触れていく。ヨーキッサダーは大人しいと感じられるほど静かな立ち上がりだ。

ヨーキッサダーが前蹴りを見舞う。往なす武尊ではあるが、パワーが強い様子だ。足の太さも武尊の2倍以上に見える。この蹴りには武尊もかなり警戒している様子である。

武尊は得意のフックを仕掛けずに腿へのローキックを散打していく。どうやらこのローキックに突破口を見出しているようだ。

1R後半、武尊の圧力とコツコツ当てるローキックでヨーキッサダーがロープを背負う場面になった時、ヨーキッサダーが渾身のミドルキックを放った。

ガードをした武尊の腕はその1撃で赤く変色した。武尊がフックの連打をコンビネーションで放つ。ガードの上からでも重みのある武尊の打撃に対しても効いた素振りを見せないところにヨーキッサダーのタフさが伺える。

残り10秒のところでヨーキッサダーが蹴りの姿勢で詰めてきた。武尊が後ろに下がったところで1Rが終了した。

武尊が後ろに直線で下がる姿はK-1ではあまり見られる光景はないのでそれだけにヨーキッサダーの圧力を感じているのだろう。

そして2R、武尊は1R同様にローキックをヨーキッサダーの内腿に当てていく。ヨーキッサダーも1Rに比べると蹴りの数が増えていく。1発の重さがあるので武尊も自分から果敢にプレッシャーをかけていく。武尊がジリジリと前に出てきてヨーキッサダーがロープを背にする場面が多くなっていく。

武尊の徹底したローキックをやや嫌がる様子のヨーキッサダー。前に出始めたヨーキッサダーが膝からのフックを見舞った。武尊はこれに合わせたカウンターのフックを当てた。まともに食らったヨーキッサダーは後ろから崩れた。なんとか立ち上がるもかなり効いている様子だ。

再び近づき武尊の右のオーバーハンドが当たり、蹌踉めくヨーキッサダーの顎をフックで貫き、2度目のダウンを奪ったところでレフェリーが試合を止めた。不動の男を初めてKOで倒した武尊。序盤から打ち続けたローキックがやや効いていたヨーキッサダーの焦点を足にいかせたのが決め手となった。

KO勝利を狙う武尊のファイトスタイル

武尊といえば、負けん気の強さとそのスター性から魔裟斗なき後の新生K-1のカリスマになったといえるだろう。K-1三階級制覇を成し遂げた武尊は打撃力に加え、技術力にも磨きがかかっている。

さらに近年のアメリカ合宿でMMAファイターとの練習を重ね、立ち技の距離にとどまらない多様なトレーニングをしているようにみえる。

武尊の美学は相手をノックアウトすること。それ故に果敢に前へ詰めていき、相手を仕留めにいくスタイル。

だが、武尊にはKOを実現するためのプロセスがある。武尊は持ち味のパンチを当てる前に蹴りで相手の意識を散らす攻撃をする。そして相手の意識が下段にいったところでフィニッシュを決める。

ヨーキッサダー戦においても、ダウンに直接つながる攻撃はオーバーハンドやフックといった手技だったが、ローキックによって試合を自分のペースで進め、チャンスを作り出していた。

武尊は圧倒的な打撃力に加え、KOを生み出すまでのプロセスを作り出すことのできるテクニシャンの1面も持っている。アダム・ブアフフ戦においても、こうした武尊らしいファイトが見られるかもしれない。

(文・Totty)

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