2019年7月でのRIZINライト級ワンマッチ。朝倉未来vs矢地祐介の試合について紹介したい。
RIZINのお祭り男としてRIZIN発足直後からRIZINライト級日本人エースとして連勝を叩き出してきた矢地祐介だったが、前年初黒星に喫し2連敗中と落ち込み傾向にあった。
SNSで生まれた矢地祐介と朝倉未来の因縁
だが矢地は今回ばかりは負けられない相手だった。その相手こそが朝倉未来。路上の伝説の異名を持ち、アウトサイダー2階級制覇後にRIZINに参戦し、無敗の戦績を収めている。
朝倉未来がRIZIN大晦日で1階級上の選手との対戦オファーを断ったとの報道が流れた。これに矢地がSNSで言及した事で未来と矢地の因縁がうまれた 。
ファンの間でも朝倉未来vs矢地祐介のライト級日本人エース決定戦に期待を寄せた。試合開始前からの煽り合い。漢同士の真夏の決闘が開幕した。
朝倉未来vs矢地祐介の試合展開
場内は歓声に包まれていたが、リング上の2人は冷静だった。静かな立ち上がりで矢地が未来にローを放っていく。体格差では矢地の体がやはり大きく見えるがスピードでは未来の方が上だ。
未来も中距離から矢地に強烈なボディフックを見舞い、さらに未来のカーフキック(膝下へのロー)が目立ってきた。蹴りをカットしていない矢地にどんどん当てていく。
互いにまだ探っている状態なのか隙を見ては当てていく展開が見られた。1R終了間際、コーナーを背にした矢地のこめかみを未来の右フックが掠めた。
2Rも未来のカーフキックが矢地を襲う。矢地の足が流れ、赤く変色してきた。そこへさらに未来のボディフックが入る。動きの硬い矢地に未来の柔軟な打撃が目立ってきた。
中盤で打撃戦に持ち込んだ矢地がタックルに2度入るが腰の強い未来はそう簡単に崩されない。
試合終盤、挑発からの殴り合いに!
3R突入も未来はカーフキックで矢地に入る隙を与えない。控え気味になってきている矢地。タックルを見舞うも完全に見切られている。そして試合終了10秒前で意を決した矢地がフックで飛び込んだ。
これに笑顔で未来が両腕を広げ、挑発をする。矢地もニヤリと笑い挑発を返す。両者、近距離での殴り合いになる。ゴング終了間際にフックの飛び込み様にバランスを崩している矢地の頭頂部に未来がフックを当てた。矢地がダウンしたところでゴングが鳴った。判定は3-0のフルマークで朝倉未来に軍配が上がった。
頭の良い格闘家、朝倉未来という男
戦前の煽り合いから試合終了の時までの約半年間に及んだ2人の戦いは幕を閉じた。
結果的には階級下の未来が矢地に勝ち、このまま同年秋に開催されるライト級GPに日本人エースとして名乗りを上げると思われた。だが、未来はライト級GPに出場しなかった。
未来の適性階級のフェザー級での試合を望んだのだった。今回の試合で-70kgのライト級での試合で未来がパワー負けしている様子はないように見えた。しかし、朝倉未来は自身の適性階級で本領発揮できると確信できる状況でなければ闘う気にはならないのだと思う。
以前にも階級上の選手のオファーが流れたこともあった。真相は定かではない以上、そこについては詳しく言及はしないが、未来という男は極めて頭が良い格闘家。そして慎重な選択をする。
朝倉未来は人気YOUTUBERという顔も併せ持つ。この男の描いたシナリオ通りに物事が動いているのかとさえ思わせてしまう。まるで未来を分析によって描いているようだ。
朝倉未来という男は漫画に描いた主人公のような人間だと思う。人間離れしているのはフィジカルだけでなく、人間性もなのかもしれない。
(文・Totty)